地理空間
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韓国公州市における済民川の景観変化と地域活性化
山下 亜紀郎
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2018 年 10 巻 3 号 p. 247-257

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抄録
 本稿の目的は,韓国忠清南道公州市の旧市街地南部を対象に,同地区を流れる済民川の景観変化と住民による地域活性化の取り組みを明らかにし,近年の河川環境の創造が住民意識や地域活性化にもたらした意義について考察することである。1970年代までの済民川は,土手と柳並木に象徴される,洗濯・水遊びの場として住民に身近な存在であった。しかしながら1980年代になると,水質が悪化し流量も減少し,コンクリートの護岸で生活空間と隔てられた存在になった。2000年代以降,水質や流量が回復し,そして2011年から大規模な生態河川造成事業が実施され,現在の済民川の景観が形成された。この一連の景観変化の中で,地域住民がどの時代の済民川の景観を原風景として捉えているかが,現在の済民川に対する多様な評価に影響している。済民川における新しい景観の創出は,まずそれを肯定的に評価している人たちによる,さまざまな地域活性化の取り組みを呼び起こしたという意義がある。
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© 2018 地理空間学会
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