地理空間
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オーストリア・ハルシュタットにおける世界遺産登録地の商品化
—ヨーロッパの世界文化遺産登録地におけるオーバーツーリズムの分析—
呉羽 正昭
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2018 年 11 巻 3 号 p. 47-65

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抄録

現在,ヨーロッパに集中する世界遺産登録地では,グローバル化による国際ツーリズムの進展とともに訪問者数が急激に増加している。その結果,オーバーツーリズム,すなわち訪問者の飽和・過剰やそれに伴う諸問題の顕在化がみられる。本研究は,オーストリアのハルシュタットにおけるオーバーツーリズムの実態を解明し,それに伴う諸問題を場所の商品化と関係づけて整理することを試みる。ハルシュタットは,「ハルシュタット文化」や塩鉱山に基づく歴史性,密集木造家屋が湖と周囲の山々と調和した景観に基づいてツーリズムの目的地として成長してきた。世界遺産登録(1997年)後の10年以上の間は訪問者数に増加はみられなかったが,2014年頃から日帰りの訪問者数が急激に増加している。増加に大きく寄与したのは周遊ツアーの中国人で,彼らは中央ヨーロッパに存在する複数の世界遺産登録地を団体バスで訪問する。しかし,近年,騒音,私有地への不法侵入,ドローン飛行などが問題視されている。ゲマインデ(自治体)は,訪問者に地元の人々の静かな生活を尊重するよう求めた掲示設置等によってオーバーツーリズムの解決を目指している。

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