抄録
本研究では,様々な社会領域において,農業被害をもたらす外来生物ジャンボタニシがアクターとして,各アクターといかに関係し,ジャンボタニシを通じて異なる社会領域同士がいかに関係しているか検討した。ジャンボタニシが関連する法制度の変化や農業被害に,ジャンボタニシの近縁種が流通する観賞魚業界という社会領域が反応していることが示された。また,農業の領域でのジャンボタニシと個々の農業者の間には,様々な外部要因による影響がある。また,ジャンボタニシからの働きかけへの農業者の応答も駆除という行動に留まらず,複雑な関係にある。また,外来生物としてのジャンボタニシの働きかけが,その被害防止に用いられる農薬の展開の要因となっている。このように,外来生物が社会へ埋め込まれ,時にアクターと化していることは,今後外来生物に関する問題の解決を試みる際に,社会的な要素を考慮するための重要な視点であると考えられる。