抄録
2020年の東京五輪を見据えた都市戦略や観光政策と関連して,都心の商業地に集積する飲食店が観光資源やナイトライフ資源として注目されるようになった。本研究では,東京の三つの商業地(新宿,銀座,渋谷)を対象に,飲食店の集積や営業時間の特徴からみた商業地の動的特性を明らかにし,また,ナイトライフ受容基盤としての特性を検討する。飲食店の大規模POIデ−タから昼,夜,深夜での営業する店舗のジャンル別集計や空間分布を分析した結果,以下のことがわかった。どのエリアに関しても,夜,昼,深夜の順に営業する店舗が多いが,これは店舗数の多い居酒屋,ダイニングバ−・バ−・ビアホ−ル,焼き鳥・肉料理・串料理といったジャンルの飲食店の多くが,夜から営業を開始するためである。深夜では,酒類を提供する飲食店の一部が営業を継続または開始し,他は閉店する。このことは,歓楽街としての商業地の特性をよく表しているといえる。飲食店の空間分布に関しては,新宿と銀座のエリアでは,深夜に営業する店は夜のみに営業する店よりも,特定の範囲に集中的に分布していた。一方で,渋谷エリアでは,どちらのタイプの店もエリア全体に比較的広く分布していた。