抄録
本研究は,タワーハムレッツ議会によるタウンセンター政策と,ブリックレーン商業集積地の土地利用を検討して,政策と実態との間の整合性を考察する。1990年代後半以降,タワーハムレッツ議会はブリックレーンをバングラタウンとしてブランド化し,バングラデシュ系住民の起業機会を確保し,観光地として発展させた。ブリックレーンの北部では文化・クリエイティブ産業が集積し,夜間経済が発展した。さらに,ストリートアートが観光客を全国から吸引した。しかし,2013年以降,南部ではバングラデシュ系の事業所が減少し,多様なエスニック料理と高級専門店が増加し,商業ジェントリフィケーションが進展している可能性がある。このように,ブリックレーンは,広域商圏を持つ専門的な商業集積地になりつつあるが,タワーハムレッツのタウンセンター政策では,ローカルな需要を満たすディストリクトレベルの階層に位置づけており,ギャップがあるといえる。