抄録
本稿では,東日本大震災以降の地方自治体において,津波対策がいかに講じられてきたかを,先進的な取り組みを実施している静岡県浜松市を事例に明らかにした。浜松市では南海トラフ巨大地震に備えて,東日本大震災による被害を受けた自治体等を独自に調査し,法令に基づく津波防災地域づくり推進計画や津波避難計画の策定を全国に先駆けて実施してきた。また,沿岸部への津波防潮堤建設や津波避難施設の整備・拡張といったハード対策,区版避難行動計画や地区の津波避難計画といったソフト対策を,それぞれ,地域の文脈に合わせながら実施してきた。浜松市における津波防災の動向は,公助が主となってその取り組みを推進する一方で,自助と共助の取り組みを意識し,防災計画上の位置づけを明確にしている点において,他の地方自治体における津波対策の展開に参考となると考えられる。