地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
松本市中心部における公共井戸・湧水の機能と自発的維持管理
趙 文琪山下 亜紀郎
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2023 年 16 巻 2 号 p. 89-105

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抄録
本稿では,松本市中心部における20カ所の公共井戸・湧水を対象に,行政側の施策および住民側の意識と活動に着目しながら利用と維持管理状況を分析することで,それらが存続できる内的要因を住民による自発的活動の視点から考察した。 1990年代前後から,松本市によってさく井工事が行われたことにより,飲用としての公共井戸の機能が戻るとともに,親水空間や観光資源としての利用も始まった。住民清掃の形態は,町会や市民団体などによる定期清掃や当番清掃と,有志による個人単位の活動としての清掃活動に分けられ,それぞれに自発性がみられる。 こうした公共井戸・湧水における自発的維持管理が続けられる要因は二つと考えられる。一つは,喫茶としての新しい利用によって住民同士のコミュニケーションの場に発展してきたことで,所有意識が生まれたからである。もう一つは,住民が地域への責任感を持っているため,または観光客や利用者が増えたため,それらによって地域住民の規範意識が生まれているからである。それにより,地域住民の清掃の動機や意欲が高まり自発的活動が続けられていることがわかった。
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© 2023 地理空間学会
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