抄録
ヨーロッパの地域理解は,従来,自然環境や文化の地域的多様性,EU による政治・経済統合などに着目して進められてきた。一方,移民や難民といった,いわゆるエスニック集団に関する理解は少ないままである。固有の歴史や文化をもつ集団でありながら,彼らの視点から理解しようとする機会は意外なほど限られている。たとえば中学・高等学校の地理学習でも,彼らの流入が取り上げられているものの,よそからヨーロッパに加わってきた集団として位置付けられ,彼らについては理解しにくいままである。しかし,外国人がますます増えるヨーロッパの理解に彼らの存在は不可欠であり,そのための新しい視点の提示が必要であろう。ここではエスニック集団に着目した地域理解の可能性について論じた。