地理空間
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鹿児島県における黒豚のブランド化にみる豚肉供給産地の性格
淡野 寧彦
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2009 年 2 巻 2 号 p. 133-151

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抄録

 本稿では,鹿児島県における黒豚のブランド化に着目し,豚肉供給産地の存続のために,ブランド化を進める産地がどのような性格を持つのかを明らかにする。鹿児島県では,1960 年代まで黒豚を飼養する複合零細経営が広く行われていた。しかし1970 ~ 80 年代になると,生産効率の良い白豚が飼養され,さらに飼料供給,生産,加工等の一連の過程を結合した生産グループが形成された。これらによって鹿児島県は,日本最大の豚肉供給産地となった。ところが1990 年代以降,豚飼養頭数が停滞する一方で,鹿児島県では黒豚生産が急速に復興し,黒豚のブランド化が進められた。黒豚のブランド化は,生産グループによる組織的な安定供給と,黒豚の定義や品質管理が産地全体で取り組まれることによって進められた。大消費地に近接する茨城県の有力な豚肉供給産地では,生産者が個々に収益の拡大やリスクの軽減を図った経営を展開する一方で,ブランド化が産地の存続に十分に機能していない。これに対して鹿児島県の豚肉供給産地においては,高い生産効率や安定供給の体制を継続しながら,産地全体で黒豚のブランド化に取り組み,それによって強い情報発信力を生み出すことで,産地の存続が図られている。

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© 2009 地理空間学会
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