地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
ブラジル・南パンタナールの伝統的な農場経営とその課題
バイアボニータ農場の事例
丸山 浩明仁平 尊明コジマ A. Y.
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2009 年 2 巻 2 号 p. 99-132

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抄録
 ブラジル南パンタナールのバイアボニータ農場では,天然草地の放牧地に依存した,肥育用の仔ウシ生産を目的とする仔取り繁殖経営が中心に営まれている。ここでは,季節的な河川の水位変化に起因して発現する多様な天然草地の状況に合わせて牛群を管理したり,火入れや伐採・巻き枯らしにより草地の森林化を抑制したりするなど,農場間の相互扶助システムとともに,パンタナールで培われてきた牧畜経営のワイズユース(wise use)が現在も継承されている。しかし,農場規模が小さいうえに,労働力不足,ウシの受胎率の低さ,生産性や品質の低さといった諸課題に直面して,伝統的な牧畜経営の維持・発展は困難な状況にある。こうした現状を打開して経営の安定化を実現するためには,繁殖・出荷カレンダーを作成してウシの繁殖時期を特定化し管理作業の効率化を図ることや,質の高い種牡ウシや牝ウシを導入して,より厳格な牧区規制の下で両者の頭数管理や繁殖を効果的に実施することなどが必要である。
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© 2009 地理空間学会
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