抄録
本稿では,スイスアルプス世界自然遺産のアレッチ地域における自然環境に配慮した多様な観光の取り組みと,サンモリッツにおける冬季観光の多様性の実態について明らかにした。アレッチ地域では,多数の官民関係者の積極的な参加によって,自然・文化景観の多様性と固有性,生態系が保全されている。世界遺産の大アレッチ氷河を間近で眺望できるベットマーアルプは,四季の自然や夏季の家畜放牧,住民の伝統文化を観光資源として有効活用し,年間を通じて各種スポーツや文化的催事が行われている。また,冬季スポーツの発祥地と称されるサンモリッツは,冬季スポーツ競技の国際大会を積極的に誘致・開催することで,住民の生活基盤やスポーツ・宿泊・交通など各種施設が整備され,多様な冬季スポーツの体験や観戦,各種観光催事による冬季観光が発展した。以上のように,両地域では自然環境に適応する観光業が成立している。