地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
フランス中央高地におけるランドネとツーリズム
R.L. スティーブンソン『旅はロバを連れて』
市川 康夫
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2014 年 7 巻 2 号 p. 185-202

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抄録

 本研究は,19世紀末の紀行文『旅はロバを連れて』(R. L. スティーブンソン著)に着目し,フランス中央高地におけるランドネとツーリズムの関係を文化的資源とのかかわりから論じたものである。スティーブンソンの道は,フランスランドネ連合(FFR)によるルート整備が契機となり,スティーブンソン組合の結成によって実現した。組合はEUや国,地域からの補助金によって成り立ち,さらに営利を主目的としないことでオルタナティブなツーリズムが形成された。一方,ランドネ旅行者は,文化的資源だけではなくランドネを通じて得られる自己の体験,あるいはイメージに旅の動機を向けていた。まだ見ぬ土地への何かを求める欲求,そしてテロワールを感じる場所としての山村イメージが,セヴェンヌのランドネへと旅行者を駆り立てている。スティーブンソンの道は,ランドネ旅行者と文化,自然,テロワールとの相互作用の過程にあるツーリズムということができよう。

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© 2014 地理空間学会
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