地理空間
Online ISSN : 2433-4715
Print ISSN : 1882-9872
生産における地域との結びつきの過程
愛媛県における削りかまぼこを事例として
池田 和子
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 8 巻 1 号 p. 19-33

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抄録

 本稿は,愛媛県で製造される削りかまぼこを事例とし,生産活動が地域と結びつき領域化する過程を明らかにする。分析の対象は,削りかまぼこの物的な変化と価値の変化である。物的な変化は削り工程の機械化の過程で生じ,その際削りかまぼこが域内の他の生産や商品と結びつき,地域独特の商品上の特色がもたらされた。また開発された削り機は他のかまぼこ事業者にも広まり,商品の形状と製造過程に地域的な共通性が生じ,ローカルに標準化されていた。価値の変化も機械化にみられ,それまでの削りかまぼこの位置づけであった副産物や売れ残り商品の活用という実用的な価値は弱まっていった。その後冷凍すり身を受容せずかまぼこ生産全体に変化がない期間に,削りかまぼこに対する地域の伝統的な食品という価値が生じていた。削りかまぼこの文化的価値はローカルにのみ共有されるもので,削りかまぼこの生産・消費の地理的範囲を規定する。

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© 2015 地理空間学会
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