地理空間
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8 巻 , 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 馬場 千遥, 𠮷田 国光
    2015 年 8 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿は,過疎に直面する長野県下高井郡木島平村糠千地区において展開する地域と大学の連携した地域づくりの現状と課題を,地域づくりに関わる各主体の取り組みの来歴や住民の参加状況,主体間の連携のあり方を検討することから明らかにするものである。木島平村では,1980年代後半から地域住民を中心に,その他に行政や大学などが主体となって様々な取り組みが実施されてきた。そして2010年に農村文明塾が各主体の連携を目的に設立され,住民が学生を受け入れるコンソーシアム事業を軸として3主体は連携を展開してきた。こうした連携事業に対して住民から肯定的意見が聞かれる一方で,取り組みの実施自体が目的化されることを危惧する意見も出ている。今後の課題としては地域づくり全体における実施される各事業の位置づけや,各成果とそれに至るプロセスの可視化を通じて,将来像を考えていくことが求められるといえる。
  • 池田 和子
    2015 年 8 巻 1 号 p. 19-33
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
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     本稿は,愛媛県で製造される削りかまぼこを事例とし,生産活動が地域と結びつき領域化する過程を明らかにする。分析の対象は,削りかまぼこの物的な変化と価値の変化である。物的な変化は削り工程の機械化の過程で生じ,その際削りかまぼこが域内の他の生産や商品と結びつき,地域独特の商品上の特色がもたらされた。また開発された削り機は他のかまぼこ事業者にも広まり,商品の形状と製造過程に地域的な共通性が生じ,ローカルに標準化されていた。価値の変化も機械化にみられ,それまでの削りかまぼこの位置づけであった副産物や売れ残り商品の活用という実用的な価値は弱まっていった。その後冷凍すり身を受容せずかまぼこ生産全体に変化がない期間に,削りかまぼこに対する地域の伝統的な食品という価値が生じていた。削りかまぼこの文化的価値はローカルにのみ共有されるもので,削りかまぼこの生産・消費の地理的範囲を規定する。
  • 堀江 瑶子
    2015 年 8 巻 1 号 p. 35-52
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
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     本稿では,エスニックビジネスがホスト社会における中心商店街に進出する過程および要因を解明することを目的とした。対象地域は,明治期以降横浜の中心商業地としての機能を有する商店街,伊勢佐木モールである。本商店街の分布する横浜市中区は,1990年代以降ニューカマーが急増し,それと同時に商店街周縁地域には多数のエスニック事業所が分布,2000 年代前半に飽和状態を迎えた。一方,伊勢佐木モールにおいては,バブル経済崩壊以降,テナント賃料の低下や集合住宅および雑居ビルの過剰供給,老舗店舗の撤退が相次ぎ,テナント入居機会が拡大した。その結果,2000年代以降より比較的商業的価値の低い伊勢佐木町3~7丁目においてエスニックビジネスの進出が開始された。2010年代以降になると,商況の著しい伊勢佐木町2丁目におけるエスニックビジネスの展開が顕著となり,その業種構成についても従来の同胞集団向け店舗のみならず,日本人顧客を主要な対象と定める店舗が多数進出していることが明らかとなった。
  • Takaaki NIHEI, Hisayoshi HAYASHI, Ricardo SHIROTA
    2015 年 8 巻 1 号 p. 53-80
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
    Brazil is the largest producer of sugar and ethanol made from sugarcane. It is well known that automobiles in Brazil run on ethanol, but the current conditions of sugarcane production have not yet been explained from the viewpoint of human geography. To present basic data pertaining to sugarcane production, this study reconsiders its characteristics by examining the production elements such as land use, cultivation methods, and the management of cases involving farms, custom harvesters, agricultural cooperatives, machinery manufacturers, and sugar factories. The main data used were obtained from fieldwork conducted in the State of São Paulo. The results show that the vast amounts of land used in Brazil for sugarcane production have developed around the sugarcane production centers, especially those in the State of São Paulo. In this area, the scale of production has grown through the introduction of new technology, mechanization, tenant farming, and single-crop production. The structure of sugarcane production that comprises these elements is complex, but it can be rationalized in terms of economy. With respect to environmental load, there are anxieties about the amount of industrial materials being applied in the course of land use.
  • 堤 純, 吉田 道代, 葉 倩瑋, 筒井 由起乃, 松井 圭介
    2015 年 8 巻 1 号 p. 81-89
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿は,多文化社会の特徴をもつオーストラリアを対象に,移民の増加プロセスおよび社会経済的な特徴を把握することを試みたものである。1970年代に白豪主義が撤廃されたことは,オーストラリアが多文化社会へと舵を切る大きな契機となった。シドニーを対象に移民の増加をみると,仕事では英語を使うものの,家庭では英語以外の言語を使う人口の増加が著しい。シドニー大都市圏では,増加の著しいアラビア語人口やヴェトナム語人口などは,ポートジャクソン湾の南側の低所得者の多い地域に集中する傾向にある。一方,標準中国語や広東語を話す人口は,大多数は低所得者の多い地域に集中するものの,同湾の北側に位置する高所得者の多い地区にも相当数が進出していることがわかる。国勢調査のカスタマイズデータを分析した結果,中国系やインド系の移民は,シドニーに多く住む他のエスニックグループに比べて,学歴や所得の面で高い傾向が確認できた。
  • 吉田 道代, 葉 倩瑋, 筒井 由起乃, 松井 圭介, 堤 純
    2015 年 8 巻 1 号 p. 91-102
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
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     本稿では,人口規模が縮小し,居住地が分散しつつあるシドニーのイタリア系コミュニティが,移民集団としての民族文化を表象する場所を1世の集住地ライカートに求め,コミュニティの拠点を再構築しようとする試みに注目した。ライカートは,1950年代にイタリア系移民1世の居住・商業活動の中心であったが,1970年代以降イタリア系住民の数が減少し,そのビジネスも縮小していった。この状況下で,1999年に同地区にイタリアの景観・文化をイメージした商業・居住・文化活動の複合施設,イタリアン・フォーラムが建設された。しかしこの施設は2000年代末には商業的に行き詰まり,イタリア系コミュニティの歴史や民族文化を表象するアイデンティティの場所としても機能しなかった。それでも現在,イタリア系住民の互助組織がこの施設内のイタリアン・フォーラム文化センターを利用し,イタリア系コミュニティの拠り所となる場所づくりをめざしていることが明らかとなった。
  • 葉 倩瑋, 筒井 由起乃, 松井 圭介, 堤 純, 吉田 道代
    2015 年 8 巻 1 号 p. 103-115
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     近年オーストラリアにおいて中国系移民(華人)が急速に増加している。首都キャンベラでは,とくにその割合は高く,2006年から2011年の5年間でほぼ倍増した。キャンベラで華人人口が増加し始めたのは,天安門事件発生後の1990年以降で,2014年現在,17の華人団体が形成されている。キャンベラの華人社会の特徴は,出身地や目的等を異にするこれらの団体が,一つの組織を形成し,相互に協力し連携し合いながら,キャンベラの華人社会全体をまとめていることである。またキャンベラが政治・行政機能に特化した首都であるという地域性を反映し,華人社会においても公務員と学生が圧倒的に多い。そのため華人社会の空間構造は,他都市のように出身地ごとの居住分化はみられず,来豪年および収入によって,華人社会の空間構造が分化していることが明らかとなった。
  • 筒井 由起乃, 松井 圭介, 堤 純, 吉田 道代, 葉 倩瑋
    2015 年 8 巻 1 号 p. 117-129
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     近年,オーストラリアではアジア化が進んでいる。なかでも多いのが,中国,インド,ベトナムである。中国やインドからの移民が2000年代以降に急増したのに対し,ベトナムからの移民は1970年代後半からのインドシナ難民を中核としており,在豪年数の長さと難民としての性格を持つ点が特徴的である。ベトナム系は特にニューサウスウェールズ州とヴィクトリア州に多いが,クイーンズランド州,南オーストラリア州にも1万人以上が居住している。シドニー郊外のカブラマッタに代表されるような「ベトナム人街」も形成されている。このようなベトナム社会の形成過程とその実態を解明するのが本稿の目的である。本稿では,来豪時期によって社会経済的な背景が異なることに着目し,属性の違いが移民の職業選択や居住地選択といった意思決定や生活形態にどのような影響をおよぼしているのかについて,南オーストラリア州アデレードを対象として検討する。
  • 松井 圭介, 堤 純, 吉田 道代, 葉 倩瑋, 筒井 由起乃
    2015 年 8 巻 1 号 p. 131-142
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿では,現代における聖地ウルルの観光動態および聖地をめぐる場所のポリティクスを,先住民文化としての聖地の管理・保全と資源化の視点 から検討した。ウルルにおけるツーリズムの動態について略述したうえで,聖地をめぐる管理とツーリストの動き,先住民の宗教的世界と土地所有をめぐる概念について検討し,最後に聖地をめぐる場所のポリティクスの視点から考察した。ウルルは先住民(アナング族)の人びとにとって,神話的な意味世界の中心として重要な意味を持つと同時に,観光資源としての高い価値を有している。したがってウルル登山は,聖地とツーリズムの間の緊張関係をもたらす。両者の相剋はステークホルダー(先住民,政府,ツーリストなど)間だけでなく,内部においても多様であり,ウルル登山の制限をめぐる場所のポリティクスは,「先住民文化の真正性」と「政府の努力」と「ツーリストの満足感」を担保する装置として機能していることが考えられる。
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