高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
論稿
東京都所在大学の立地と学部学生数の変動分析
東京都所在大学の立地と学部学生数の変動分析
末冨 芳
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2008 年 11 巻 p. 207-228

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抄録

 大学立地政策とは工場等制限法における大学新増設規制とともに,文部行政による設置認可や定員管理といった複合的な法・政策を意味する.本稿では大学立地政策の規制効果を検証するために,東京都所在大学を対象とし,大学の立地動向の質的分析と学部学生数および大学移転の変動に関する量的分析を行った.対象年度は1955,1965,1975,1985,1995,2005年度の6時点である.

 先行研究においては日本における大学進学率の上昇とそれとともに浮上した地域間の進学機会格差,その是正のための大学地方分散の必要性といったことがらへの関心から,文部省の高等教育計画・政策に関する政策研究や,大学立地政策が大学生の地域間移動におよぼした影響の計量的評価等の分析が蓄積されてきた.ただし,大学立地政策の規制対象となった都市に中心的に着眼し,大学の立地や学生数がいかなる変動を見せてきたのか,という視点からの研究が不足しており,この分野での研究の蓄積が必要とされる状況にある.

 こうした課題意識のもとで,東京都に所在した大学について学部・学科・学年別に所在地と学部学生数をデータベース化し(東京都所在大学データベース),所在地に関する質的分析と,学部学生数と大学移転パターンに注目した量的分析を行った.

 その結果,(1)先行研究ではあきらかとはなっていなかった東京都規制対象地域における学部の新増設抑制効果は1975-85年度に顕著であったこと,(2)1995年度と2005年度データの比較から学部学生の「都心回帰」はまだ確認されないこと等が判明した.

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© 2008 日本高等教育学会
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