2010 年 13 巻 p. 115-128
本稿では,米国の大学を対象にして,IR 室の経営支援機能の必要性について実証的に分析することを目的とする.本稿では,学長の当該大学における学内経験が,組織内で経営の意志決定に必要な情報を収集するチャンネルを増やす効果があると仮定し,学長の学内経験と,IR 室の規模,および,経営情報システムの設置状況の関係を検討した.本稿の主要な結論は,米国では,学内の情報流通チャンネルを持つトップがいる大学ほど,IR 室の機能は縮小し,経営情報システムが置かれない傾向があるというものである.この結果は,トップマネジメントの多くを学内から輩出している大学では,経営支援の専門部署としての役割や,IR 専門職人材の育成は,必ずしも必要とはいえず,IR 室は事実データの収集とその流通を担う機能が望ましいことを示唆する.