高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
特集 スタッフ・ディベロップメント
高等教育研究と大学職員論の課題
羽田 貴史
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2010 年 13 巻 p. 23-42

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抄録

 本論は,近年勃興している大学職員論のメタ評価を試み,高等教育研究としての課題を整理したものである.近代日本の大学制度の展開において,国立大学職員組織は,幹部職員と大学採用の格差構造,大学職員と文部省職員の二重構造,学長と事務局長の二元構造という特徴を持つようになった.60年代の大学紛争後に,大学運営の民主化としてこの二元構造の克服が提唱されたが実現せず,90年代には少子化などを背景に,私学の大学職員論が生起し,1998年大学審議会答申を機に,国立大学職員論も展開されるようになった.しかし,国立大学職員論には,教員と職員の対抗図式の上に立って,職員の役割拡大と専門性向上を主張し,国立大学の職員組織の構造が視野に入っていないなどの問題がある.大学職員論を発展させるための研究的な課題と,高等教育研究を発展させるための大学職員論の課題双方を指摘した.

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© 2010 日本高等教育学会
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