高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
特集 高大接続の現在
日本とアメリカの比較から高大連携の政策アプローチを再考する
神原 信幸
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2011 年 14 巻 p. 127-148

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抄録

 この論文では,高大連携の望ましい政策や実践を考察するために,日本とアメリカの高大連携教育の目的,アプローチ,実践の政策を比較する.

 現在の日本の高大連携は,高校と大学の間の教育の断絶を結ぶものとして導入された.しかし,高校レベルでは教育の質の低下,高等教育側では体系的な学士教育課程の不在という問題に挟まれ,商業化の介在,大学経営問題への矮小化,進学指導以上のものにはならないという生徒へのインセンティブの欠如等のために,本来の社会政策としての教育政策の質を失っている。

 アメリカの高大連携は,社会発展と高等教育の目的に応じ,学術・学芸のイノベーション人材を育てる英才教育としてアプローチ,知識とスキルを備えた人材を輩出することで経済的な発展をもたらす人材養成目的としてのアプローチ,そして教育機会保証によって社会正義を実現するためのアプローチと分化発展し、それぞれ特徴のある政策・制度・実践の形態ができてきた. 日本の高大連携を改善し,本来の目的を達成するためには,高等教育のミッションを念頭にしながら,全学校制度をひとつの「教育事業」に見立てて,初等・中等教育から高等教育までをつなぎ目のない一つの体系と考えて教育課程を再編することが必要である.高大連携が大学に進学する学生層の質と量との底上げを図り,社会発展に結びつくように,異なる教育段階の間で,教育内容と学生の学力がどのくらい重なり合うのか検討し,大学の単位として認定するインセンティブを組み合わせることを施策に取り入れるべきである.

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© 2011 日本高等教育学会
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