欧州では,近年,高等教育規模が継続的に拡大してきた.その間,福祉国家の見直しや新公共経営の導入に伴って高等教育の市場化が進展したが,高等教育は引き続いて公共財(public good)と位置付けられて,基本的には政府の責任の下で提供される体制が維持されている.多くの国は高等教育の無償制又はそれに近い制度(準無償制)をとるか学費を低廉に抑えている.
高等教育の公的性格は関連政策全般の在り方に大きく影響し,大学進学についての平等性確保や差別除去が重視されている.そして無償制等と相俟って,高等教育への進学を国家試験合格者全てに認める制度(開放入学制)をとっている国が多い.最近では,形式的な平等を超えて社会的弱者に配慮しつつ,公平性(equity)を重視したより積極的な政策が展開されている.
他方大学は,社会や政府からの進学拡大要求に対して,入学者の質低下や教育実施の困難等を理由に反対する場合が少なくなかった.しかしながら,近年はEU のリスボン戦略に見られるように知識経済の文脈で高等教育が政策対象となり,その発展に寄与する人材育成の観点から高等教育への進学拡大は不可避とされ,高等教育進学率や学位取得率の数値目標を設定している国も少なくない.大学はこれまでになく多様化した学生を受け入れるだけでなく,その学習成果を保証することを求められ,そのための手段の一つとして中等教育(高校)と高等教育(大学)の接続(高大接続)が重視されている.
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