高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
特集 高大接続の現在
高大接続の日本的構造
荒井 克弘
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2011 年 14 巻 p. 7-21

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抄録

 本論文は,日本の現在の高大接続を特徴づける3つの側面に注目し,その変化の方向を論じたものである.

 第1は,推薦入試,AO入試に代表される非学力選抜の普及である.非学力選抜による大学・短大への入学者数は18歳年齢人口の著しい減少にもかかわらず増加傾向にあり,マクロ的にみれば,大学・短大の帰属収入を維持するうえで大きな要因となった.第2は,学生の学力低下傾向である.大学・短大の収容力が増え,進学者が増加すれば,学生の学力低下は避けられない.幅広い学力層をカバーしようとすれば,入学試験の妥当性の低下は避けられない.そのことが受験生の学習意欲の低下を生じさせ,学力低下をさらに進行させる原因にもなった.第3は,各大学が実施する個別学力試験の変化である.個別学力試験は近年,試験科目の減少と選択性が進み,試験の軽量化が一段と進んでいる.その結果,大学入試センター試験に期待される部分が相対的に増大しており,センター試験の役割は高校教育の基礎的達成度を測るという範囲に留まることはできなくなっている.センター試験をいかに上手に利用するか,アドミッションポリシーの明確化,具体化が求められている.

 高大接続は従来の選抜機能から教育機能が重視される時代に入っている.しかし日本の現状は,教育よりも大学の経営が優先される場合がないとは云えず,帰属収入確保のために大学入学者選抜が利用される事例も少なくない.高大接続の現状をいかに本来の教育目的へ向かわせるか,それがこれからの課題である.

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