2015 年 18 巻 p. 9-28
高等教育のガバナンス構造を外部利害関係者との相互作用としてマクロ的にみてみると,(1)NPMの導入による政府の役割の変容,(2)市場や政治の要請に対する敏感な応答,(3)序列化や種別化といった機関の多様化の3つの動向を確認できる.その背景には,高等教育機関を他の公共サービス提供機関と同様に効率化しようとした意図があり,また,産業界や政治の世界から目に見えやすい功利主義的な成果の実現が求められている状況がある.さらに政府は,財政再建の観点から資源配分の選択と集中を志向しており,上記の動向と方向性がシンクロしている.結局,政治,産業界,財政当局に共通の利害が,高等教育セクターに強い圧力をかけており,国立大学等の公的機関の未来に向けた選択は,市場における自由選択とはかけ離れた状況にある.