高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
特集 学生多様化の現在
高等教育費の公的負担と学生支援
福祉国家の視点から考える
田中 秀明
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2018 年 21 巻 p. 147-170

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抄録

 2017年,政府は「人づくり革命」を政策アジェンダとして掲げ,保育・教育の無償化に2兆円を投じることを決めた.人的投資の充実は,現代の福祉国家における喫緊の課題となっているが,日本における教育無償化を巡る議論では,教育の問題点や解決策などについてデータに基づく分析が乏しい.本稿では,年金や医療等の社会保障の問題を分析するとともに,教育財政と公的支援のあり方を議論する.教育は福祉国家のあり方に関係するからである.保険制度に過度に依存した日本の社会保障を改革し,人的投資に資源を振り向けることができるかが,少子高齢化を乗り切るための鍵である.ただし,教育への公的資金の投入には逆進性などの問題があるため,慎重な制度設計と高等教育全般にわたる改革と戦略が必要である.

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© 2018 日本高等教育学会
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