高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
論稿
東京大学草創期における演説会と市民への学問発信
菅原 慶子
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2019 年 22 巻 p. 165-184

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抄録

 本稿は,わが国の大学開放の嚆矢とされる東京大学理医学講談会以前における,東京大学による学問の発信の取組を実証的に明らかにする.大学制度創設前後の東京開成学校では,文部省による大学政策の揺らぎの中,大学を志向し自立的に大学像を模索する動きがあった.その取組として,東京大学創設直前の明治10年3月より,一般公開の学術演説会を毎月2回開催した.演説者は同校教員に加え,学生や学外者も登壇し,広く市民の聴講が募られた.この演説会は,英米の大学にあるような象徴たる施設としての講義室の建設と連動することで大学像を具現化し,私学慶應義塾との連帯の中で社会と大学とをつなぐ回路として取組まれた.東京大学理医学講談会以前における学問の発信の取組とその背景・意義が明らかとなった.

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© 2019 日本高等教育学会
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