2019 年 22 巻 p. 71-91
米国の大学が保有する基本財産は,金融市場の変動によりその資産価値が大きく変動する.本稿では,2008年の金融危機時における大学の基本財産の下落が大学の教育活動,及び家計の教育費負担にどのような影響をもたらしたのか検討することを通じ,米国の大学における基本財産の役割について論じる.分析の結果,大学が保有している基本財産の規模によって,金融危機時の基本財産の活用方法は異なっており,それが大学の教育活動と教育費負担に異なる影響を与えていることが見出された.この結果を踏まえ,米国の大学が如何に金融市場と付き合いながら財務基盤を固めてきたのかを考察し,日本の大学への示唆を探る.