2019 年 22 巻 p. 49-70
本稿は,高等教育と金融市場の関係を,日本学生支援機構の奨学金事業の財源の調達構造の変化と,そのことが持つ意味から検討するものである.財政投融資を財源に1984年に創設され第二種奨学金(有利子貸与奨学金)は,1999年に量的拡大が行われた.他方,その財源は,2001年の財政投融資の改革などを背景に,財投機関債の活用,民間資金の借り入れなど,財源の多元化が進められてきた.このことは,奨学金事業が金融市場との間接的な接点から直接的な接点を持つようになっていったことを意味する.そして現在,行政コストの削減のため,金融市場が積極的に活用されている.そこには,公財政が逼迫するなかで,ユニバーサル段階の高等教育進学を支える公的制度である奨学金事業に対して,その資金をどのように継続的安定的に確保していくかという制度課題がある.