高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
特集 高等教育と金融市場
日本の大学における資産運用の特徴と新たな展開
―Fiduciary Duty の概念を軸に―
川崎 成一
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2019 年 22 巻 p. 93-112

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抄録

 本稿は,米国大学の資産運用の基本的な枠組みを形成してきた,フィデューシャリー・デューティーの概念を軸に米国信託法の変遷を辿りながら,そこからみえる日本の私立大学における資産運用の特質と,近年みられる新しい資産運用の取り組みについて論じる.日本の私立大学は,本来フィデューシャリーとみなされるが,その資産運用はプルーデント・マン・ルールやプルーデント・インベスター・ルールからは乖離した,ポートフォリオ概念の欠如や単年度志向と公平性の希薄さ,自家運用,使い切り型の疑似基金という特質を有する.しかし,近年では,ポートフォリオ運用や外部運用,教育理念と合致した運用がみられ始める等,フィデューシャリーとしての責務を果たしていこうとする動きがみられる.

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© 2019 日本高等教育学会
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