2021 年 24 巻 p. 131-151
本稿は大学という組織の未来を考えるに当たり,大学が引き続き自主自律の組織として存続するために,大学や大学教員が置かれた立ち位置の改善こそ最大の課題であると定め,現状に至る経緯の中に問題点を抽出し,その改善・改革のための方策を考察することを目的としている.1990年代以来の度重なる大学改革政策が大学に対して向けられ,その結果,認証評価の導入,国公立大学の法人化,教授会と学長に係るガバナンス改革など,これまでの大学運営とは異なる方向性が目立ち,意思決定もボトムアップからトップダウンへと変化してきている.また教員や職員の役割や数の現状にも問題がある.問題解決の展望を見出すには,政治から一方的に影響を受けるだけではなく,大学も政治・政策過程に向けて積極的な働きかけが必要と考えられる.