2025 年 28 巻 p. 123-145
本稿は,米国の大学におけるDiversity, Equity, and Inclusion(DEI)を巡る動向を概観し,それを大学の自治の危機という観点を検討する.2020年以降,大学がDEIを強化する一方で,共和党支配州の一部では反DEI法が制定され,DEIオフィスの廃止などが進められている.事例研究として,1990年代のカリフォルニア大学バークレー校での多文化主義カリキュラムを巡る議論,近年の反DEIの動向,2023年以降のNew College of Floridaへの政治介入を取り上げる.DEIを巡る対立は政治的分極化を反映しており,大学の財政やガバナンス構造の問題とも密接に関連し,大学の自治を問う事態へと発展していることを明らかにする.