本稿は,わが国の家政学を一つの集団とみなして,制度化の過程を社会学的視点から検証し,学問的発展の特徴を明らかにすることを目的とした.
その結果,家政学の制度的形態は,典型的な「制度先導型」であることが明らかにされた.こうした制度化の過程を踏まえれば,1.他学問に比べて家政学の発展が遅れたのは,制度的・意識的要因に阻まれ,明治期に先進欧米諸国から学問体系を移植できなかったことに起因しているといえる.そのため,2.家政学は,新制大学に制度化されるまで,固有の職業集団を形成することができなかった.つまり,3.家政学の知識体系は,第2次世界大戦以前に帝国大学ですでに樹立していた近接学問を,戦後応用科学という形で移植することにより,整えていくことができたと考えられる.