2005 年 8 巻 p. 183-203
本稿は中国農村部の「広播電視大学」を事例とし,2000年10月から2001年11月にかけて実施した実地調査をもとに,農村部を都市部との比較という視点に立って,また新政策実施以降の新・旧タイプの学生間の比較をも視野に入れながら,その在学者と学習の実態を明らかにするとともに,学生の教育満足度を,その学習活動と学習環境との関連で分析してきた.その結果,農村部の教育用資源が貧弱であるため,新政策が「農村部に向けて」という方針を持つにもかかわらず,教育機会の上で都市部とは比較にならないほどの格差があるし,新・旧タイプの学生の学習形態がほとんど変化しなかった.農村部の学生から学習センターへの期待が高いことによって,放送授業の充実ということを具体案として掲げることもひとつの方策として考えられる.