2018 年 10 巻 2 号 p. 1-18
近年、中国ではIoTなどの新技術と関連した第四次産業革命が急速に広まり、世界から注目されている。ただし、中国における第四次産業革命の進展と世界との関係を捉えるためには、製造業に代表される第2次産業分野の発展が遅れる一方、サービス産業に代表される第3次産業分野が速く発展しているという分野による違いを考察する必要がある。
本研究では、中国の経済発展が直面する重要課題を検討するうえで、中独設備製造産業パークとシェアリング自転車ofoの事例を取り上げ、(1)規模は大きいが強くない製造業を「大」から「強」へ変えるために、ドイツとの提携を通じて、中国は政府主導で「スマート」製造業に突き進んでいる、(2)サービス産業は労働集約型と資本集約型から世界最先端技術を駆使した技術集約型への産業構造の転換を加速するために、製造業企業を含め、企業主導で多数の新興企業や伝統企業と短期間でエコシステムを共創して拡大することがわかった。
これらを踏まえ、スマート製造分野の国際標準化などに関する中独連携が緊密になると、手作業スキルの弱体化と大量失業の可能性が高まり、「ものづくり」の競争優位に依拠している日系企業は、中国市場への参入が困難になる可能性があると考えられる。一方、環境変化が速い時代において、中国のような新興国後発企業は、開放的なプラットフォームを築き、極めて短期間で国際展開し、また経営資源を自社内部で構築する先進国先発企業とは異質な競争相手が出現する可能性があると示唆する。