国際ビジネス研究
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研究ノート
中国進出日系企業における人的資源管理制度の現地適応に関する事例分析
─エージェンシー問題の視点から─
齋藤 幸則
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2021 年 13 巻 2 号 p. 91-105

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抄録

本稿では、中国に進出している日系企業を対象として、人的資源管理制度の現地適応プロセスとその経営効果を明らかにすることを目的とする。

中国における日系企業の人的資源管理に関しては、様々な課題があり、現地子会社経営に影響を及ぼしていることが指摘されてきた。課題としては、主に、日系企業の人的資源管理制度は中国の現地環境に適合しておらず、不整合があることによって、人材採用の困難性や雇用の不安定性を起こしていること、その結果、現地人材の育成が遅れていることを挙げている。しかし、既存研究における多くの結論は理念的なあるべき論に終始しており、具体的にどのように人的資源管理制度を現地適応させ、課題を克服したのか、という企業レベルでの人的資源管理制度に関する包括的な事例研究は少ない。

本稿では、こうした問題意識に基づいて、人的資源管理制度の現地適応に着目し、日系企業の人的資源管理制度の改定事例を用いて、管理制度の現地適応プロセスとその経営への効果について事例研究を行った。

その結果、T社では、従来、本社からそのまま移植した、年功序列色の強い職能基準に基づく報酬制度を、現地環境に合わせ、職務ならびに役割に基づく基準に変更しただけではなく、報酬制度を有効に機能させるための評価制度、そして両制度を支える教育制度を含めた包括的な三位一体の見直しによって、一定程度の経営指標を改善させる効果を生み出していることを明らかにした。

本稿の貢献については、既存研究では行われていなかった点として、第一に、人的資源管理制度の現地適応をエージェンシー問題として捉え、事例分析を通じて包括的に検討し、限定的ではあるが、既存の理論の有効性を検証した。第二に、発見事実として、制度改定によって離職率、不良率の2指標が向上しており、人的資源管理制度の現地適応によって、経営的効果が一定程度あったことを明らかにした。第三に、現地適応の方法を具体的かつ詳細に明らかにすることで、人的資源管理に課題を抱える日系企業に対して、実務的に有益な知見を提示した。

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