国際ビジネス研究
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13 巻, 2 号
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巻頭言
統一論題
  • Takahiro Fujimoto
    2021 年 13 巻 2 号 p. 1-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/11/03
    ジャーナル フリー

    This exploratory article aims to preliminarily describe and analyze the spread of new coronavirus (COVID-19) infections and its impact on global and local supply chains in Japanese manufacturing industries and firms. Based on existing literature on industries, firms, and disasters, we characterize the 2019-2020 new coronavirus pandemics as “the first global and invisible disaster in the era of global competition,” in which risks of factory shut-downs caused directly or indirectly by infections can happen at any part of the global supply chains. This is also an invisible disaster that affects human productive resources, as opposed to visible disasters that destroy non-human physical productive resources. In the latter case, the organizational capabilities for quick recovery of damaged sites and rampup of substitutive production are key factors, while the protective capability for defending the factory and keeping it uninfected is critical in the latter case. We argue that the spread of the new coronavirus infections is a global disaster that broke out in the middle of intense global competition, so dynamic balance between supply chain competitiveness and robustness/resilience, including quick switching between a competition-focused mode and a disaster-focused mode, is crucial. In this situation, certain factories with higher levels of deep-level competitiveness and anti-disaster robustness, strengthened historically by intense competition and major disasters in the past, may take central roles in enhancing the competitiveness and robustness of a firm’s global supply chain as a whole. We also discuss the future possibilities for rebalancing the supply chains of Japanese firms in Asia with the help of a triangular model consisting of Japan, China, and ASEAN countries.

  • 趙 福全
    2021 年 13 巻 2 号 p. 17-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/11/03
    ジャーナル フリー

    CASEは中国で「新四化」(电动化、智能化、网联化、共享化)とよばれ、日本のElectric(電動化)、Autonomous/Automated(自動化)、Connected(コネクテッド)、Shared(シェアリング)に対応している。中国はCASEに対し深く認識しており、それを今後の自動車産業の発展方向にしようとしている。無論、CASEについての認識は世界共通と言っても過言ではない。中国自動車産業の発展においてCASEが重要視されている原因は、現在中国が直面している都市問題や環境問題などを解決するチャンスとして、CASEに対して大きな期待が寄せられているからだ。また、CASEの推進を通じて、中国は自国の巨大な自動車産業を強い産業に変えていくことも期待されている。小論では、中国の現状について紹介し、その変化についての独自の認識と見解を明らかにしたい。

  • ─CASEはどこへ向かうのか─
    李 春利
    2021 年 13 巻 2 号 p. 25-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/11/03
    ジャーナル フリー
パネルディスカッション録
研究論文
  • ─企業の投資目的と国の制度環境の影響─
    林 正
    2021 年 13 巻 2 号 p. 65-77
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/11/03
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、企業が海外子会社の立地選択においてグローバルシティを選択する要因を、企業の投資目的と国の制度環境の視点から明らかにすることである。水平型および垂直型の直接投資の分類、そして国の制度環境の視点から、投資目的とグローバルシティにおける立地の関係がホスト国の経済的自由と社会的開放性によって変化するという議論を行う。日本企業の海外子会社による立地選択の影響要因を分析した結果、次の傾向が見いだされた。(1)企業は水平型直接投資の事業目的を持つ海外子会社の立地選択においてグローバルシティを選択する傾向を持つ。(2)その傾向はホスト国の経済的自由が低いほど強まる。(3)企業は垂直型直接投資の事業目的を持つ海外子会社の立地選択においてグローバルシティ以外の場所を選択する傾向を持つ。(4)その傾向はホスト国の社会的開放性が低いほど弱まる。これらの分析結果は、多国籍企業にとっての各国におけるグローバルシティの重要性が、投資目的と国の制度環境ごとに異なることを示している。

研究ノート
  • 安西 由美江
    2021 年 13 巻 2 号 p. 79-90
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/11/03
    ジャーナル フリー

    本研究は世界第2位の食品企業(2010年)であった米クラフトフーズ社と最大手日系食品企業である味の素株式会社の間における、日米国際ジョイントベンチャー(味の素ゼネラルフーヅ株式会社)を研究対象としている。

    味の素ゼネラルフーヅ(AGF)は1973年8月から、2015年2月までの42年間の長きにわたり、日米国際ジョイントベンチャー(IJV)として成功を収めた。IJV運営において極めて稀な事例である。2015年2月、AGFは味の素株式会社の完全子会社となった。

    本研究は、日米国際ジョイントベンチャーにおける企業文化の衝突と再構築が「なぜ」そして「どのように」展開され、国際ジョイントベンチャーの組織成果に繋がったかを味の素ゼネラルフーヅの事例研究によって解明することを目的としている。

    調査方法は、筆者が10年にわたり、クラフトアジアパシフィック(KAP)に所属し、KAPヴァイスプレジデント・クラフトフーズ日本代表・AGF副社長の直属の部下であった経験から、AGFの代表取締役、取締役、部長、一般社員にインデプス・インタビュー及び文書での調査を実施し分析を試みた。

  • ─エージェンシー問題の視点から─
    齋藤 幸則
    2021 年 13 巻 2 号 p. 91-105
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/11/03
    ジャーナル フリー

    本稿では、中国に進出している日系企業を対象として、人的資源管理制度の現地適応プロセスとその経営効果を明らかにすることを目的とする。

    中国における日系企業の人的資源管理に関しては、様々な課題があり、現地子会社経営に影響を及ぼしていることが指摘されてきた。課題としては、主に、日系企業の人的資源管理制度は中国の現地環境に適合しておらず、不整合があることによって、人材採用の困難性や雇用の不安定性を起こしていること、その結果、現地人材の育成が遅れていることを挙げている。しかし、既存研究における多くの結論は理念的なあるべき論に終始しており、具体的にどのように人的資源管理制度を現地適応させ、課題を克服したのか、という企業レベルでの人的資源管理制度に関する包括的な事例研究は少ない。

    本稿では、こうした問題意識に基づいて、人的資源管理制度の現地適応に着目し、日系企業の人的資源管理制度の改定事例を用いて、管理制度の現地適応プロセスとその経営への効果について事例研究を行った。

    その結果、T社では、従来、本社からそのまま移植した、年功序列色の強い職能基準に基づく報酬制度を、現地環境に合わせ、職務ならびに役割に基づく基準に変更しただけではなく、報酬制度を有効に機能させるための評価制度、そして両制度を支える教育制度を含めた包括的な三位一体の見直しによって、一定程度の経営指標を改善させる効果を生み出していることを明らかにした。

    本稿の貢献については、既存研究では行われていなかった点として、第一に、人的資源管理制度の現地適応をエージェンシー問題として捉え、事例分析を通じて包括的に検討し、限定的ではあるが、既存の理論の有効性を検証した。第二に、発見事実として、制度改定によって離職率、不良率の2指標が向上しており、人的資源管理制度の現地適応によって、経営的効果が一定程度あったことを明らかにした。第三に、現地適応の方法を具体的かつ詳細に明らかにすることで、人的資源管理に課題を抱える日系企業に対して、実務的に有益な知見を提示した。

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