国際ビジネス研究
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外国人非正規従業員のリテンション・マネジメント : 外航海運業の観点から
米澤 聡士
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2012 年 4 巻 2 号 p. 133-149

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抄録

本稿の目的は、外航海運企業における人的資源管理に焦点を当て、非正規従業員として勤務する外国人船員のリテンションが成功裏に行われるプロセスを、仮説として提示することである。外航海運業に従事する船員は、その大部分が期間限定的な契約ベースで勤務する外国人である。近年の世界的な船員不足への対応や、能力水準の高い船員の確保が焦眉の課題である外航海運企業にとって、船員のリテンションはまさに重要な課題である。そこで、本稿では第1に、リテンション・マネジメントに関する先行研究を概観し、その概念を整理すると同時に、外航海運企業による外国人船員を対象としたリテンション・マネジメントの論点を明確化する。第2に、成功事例として捉えられる大手船舶管理企業をケースとして取り上げ、同社船員戦略部門、外国人船員および船員経験者に対するインタビュー調査から、人的資源管理施策を中心とするリテンション要因と、それらに対する従業員の知覚を明らかにする。第3に、外国人船員のリテンションが成功裏に行われるプロセスを仮説として提示する。その結果、上述のインタビュー調査から得られた質的データに基づいて、人的資源管理施策を中心とする6項目のリテンション要因と、それらが離職意思の抑制に至るプロセスを提示した。それと同時に、本稿の研究から得られるインプリケーションとして、以下の3点が挙げられる。第1に、リテンション・マネジメントのプロセス、とりわけ従業員による知覚の形成過程において、外航海運業ないしは非正規従業員に固有の要因が影響を及ぼすこと。第2に、リテンションに影響を及ぼす要因として、人的資源管理施策以外の要因も重要な役割を果たし得ること。第3に、外航海運業のようなコントロール型の人的資源管理においても、リテンション・マネジメントによって差別化を図り、能力水準の高い人的資源を継続的に活用することが可能であることである。

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© 2012 国際ビジネス研究学会
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