国際ビジネス研究
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招待論文
逆境のなかの日本のビジネススクール
米国のビジネススクールと比較して
吉原 英樹金 雅美
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2015 年 7 巻 1 号 p. 15-30

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抄録

1.研究の目的と方法
ビジネススクールの日米差は大きい。学校数で約5倍、1校あたり学生数で5倍から 10 倍、学生総数で 25 倍から 50 倍ほどの差がある。また、企業の管理者のうち MBA 保持者の割合は米国企業 37.0%、日本企業 0.7%である。この日米差の理由は何か。日米差は縮小するか。日本のビジネススクールの特徴・問題点などを日本企業の経営に関連づけて明らかにする。研究は記述的・探索的であり、インタビュー調査がおもな方法である。インタビュー調査の対象は、日本のビジネススクール 17 校、教員 23 名、米国のビジネススクール3校、教員など 15 名である。
2.ビジネススクールの特徴と問題点
まず、平日夜間・週末授業がほとんどであり、2年制フルタイムは少数である。
つぎに、定員割れがつづくビジネススクールが半数をこえている。これらのビジネススクールには、存在価値に疑義があり、機能不全に陥っていると思われるもの(限界ビジネススクール)が相当数ある。その理由には、専門職大学院の制度に便乗してスタート、明確な方針・戦略の欠如、リーダーシップ不足、教員のコミットメント不足、貧弱な教育施設・管理体制などがある。早期に再生策を打たないと、淘汰の対象になるだろう。
第3に、日本語で授業するところがほとんどであり、外国人の学生は少数である。海外進出や外国のビジネススクールとの提携などの国際展開はほとんどない。
3.逆境への適応
上記のようなビジネススクールの特徴と問題点は、基本的に、新大卒一括定期採用、終身(長期)雇用、内部昇進、年功序列、平等主義、現場主義、ボトムアップ、普通人の経営(全員経営)などで特徴づけられる日本的経営のために生まれている。日本企業ではビジネススクールの必要性は弱く、評価は低い。
ビジネススクールの日米差の理由として、日本では企業は大学学部から人材を獲得するが、米国ではビジネススクールから人材を獲得するというちがいをあげることができる。
4.結論
日本企業の国際経営の進展などを理由にビジネススクールが重要性を増すと予測できるが、日本のビジネススクールをめぐる環境条件の変化は漸進的だと思われるので、ビジネススクールの日米差は今後も基本的に残るだろう。

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