2015 年 7 巻 1 号 p. 97-113
本研究は事例研究を通じて、日本型人的資源管理制度を海外に移転する際に、内部一貫性を持って移転することの重要性を示すものである。聞き取り調査により対象企業の日本本社とその海外子会社の人的資源管理制度を比較した結果からは、本社の制度は首尾一貫した合理性を持った制度であるのに対して、海外子会社に移転されている制度は全体としては合理性を持った制度ではないということが確認された。海外子会社では日本型人的資源管理の前提となる長期雇用制度が実施されていないだけではなく、報酬に関連する制度や昇進基準も日本型人的資源管理の方針と矛盾している。その結果、海外子会社で日本型人的資源管理制度が期待通りに機能しておらず、人的資源管理に問題が発生している。