抄録
新興国での人口増加や都市化の進展を背景にし、2025 年の世界の水需要は 2000 年に比べ約 30%の増加となる見込みである。特にアジアでは、急速に水需要が拡大し人口増加や都市問題等と重なり、2025 年にはアジアの水需要は世界の約 60%を占めることが予想されている。インフラ全般に共通するが、新興国の水事業者には水処理の知見が少なく、水処理用のハードの購入ではなく、インフラから事業運営・維持管理までを含んだ包括的な購入となる事例が増し、世界的な水市場の規模が 2025 年には 86.5 兆円に達すると見込まれている。
このように水事業では世界的に大きな市場がある。しかし、日本企業にとってグローバル水事業への参入障壁は高い。日本では水道事業は長く地方自治体による専管事業とされてきたため、事業運営・維持管理に関する知見や実績が民間企業にはなく、新興国の要求に合致していないからである。
海外では、水メジャーと称される欧州3社が、上流から下流まで一貫した水の事業運営を行い、グローバル水市場を主導してきた。また近年シンガポールや韓国企業が国家戦略の一環としてグローバル水市場に参入してきている。
生産年齢人口の減少や工場の海外移転等に伴い日本の水市場が停滞する一方、新興国他グローバル水市場の急成長が予想されるが、日本の水企業の国際競争力に大いに懸念がある。
これらを踏まえ、世界の企業が参画する競争環境で、経済産業省が主唱するオールジャパン構想に踊らされずグローバルな視点で水ビジネス市場を見直し、日本企業が活路を見出すための課題と施策を、日本企業のなかで一日の長がある日立製作所の事業戦略を分析することを通じて論じる。