国際ビジネス研究
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研究論文
国際分業における立地特殊優位と所有特殊優位の影響の総合評価
半導体産業の事例を用いて
八井田 収
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2015 年 7 巻 2 号 p. 121-132

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抄録

 グローバル経済下では国家間をまたいで設計と製造の国際分業が盛んに行なわれるようになり、税制、インフラ・コストといった国によって異なる立地特殊優位と製品設計や開発能力といった企業固有の所有特殊優位が競争要因にとって重要な影響を与えると考えられる。半導体産業分野の中でも、携帯端末やPC で用いられる多くの論理系(ロジック)半導体においては、ファブレス(設計特化)企業とファウンドリ(製造特化)企業との間で国際分業が行われている。ファウンドリ企業の中では、主に台湾に立地する企業が競争優位のポジションを築いている。一方、ファブレス企業においては、米国に立地する企業が主導権を堅持している。
 本研究では、このような国際分業が成立しているメカニズムを探るため、OLI 理論をベースに、半導体産業の代表的な国々(日本、米国、韓国、台湾)における税制や要素コストに関わる立地要因が企業収益に与える影響について企業モデルを用いてシミュレーションを行った。さらに、立地要因の変化が企業収益に与える影響について感度分析を行った。その結果、ファウンドリ企業においては、台湾や韓国に立地した企業が、日本や米国に立地した企業に比べて立地特殊優位の利点を生かして競争優位に立っていることが定量的に示された。また、立地要因の中では法人税率の変化が企業収益に大きく影響を与えることが明らかになった。一方、ファブレス企業に関しては、立地特殊優位だけでなく、企業固有の能力である所有特殊優位が競争要因として大きく関与していると考えられる。そこで、米国と台湾の代表的なファブレス企業について、所有特殊優位として特許(米国登録特許件数)を用いて、国別の立地特殊優位と企業固有の所有特殊優位の両方の関係を考慮した総合的優位性の評価を行った。その結果、米国の企業は、立地条件が劣位であるにも関わらず、所有特殊優位が立地の不利を上回り、台湾の企業に対して競争上の優位性を維持していることが明らかになった。

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© 2015 国際ビジネス研究学会
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