抄録
なぜ、ある本国資源は新興国市場において企業特殊優位として活用でき、他の本国資源は活用できないのか。先行研究は新興国市場の制度的な特殊性に着目し、本国資源の連続的な活用の困難性を示してきた。一方で、多国籍企業論とダイナミック・ケイパビリティ論は、本国資源の現地国市場における活用の可能性に接近している。
本稿は、本国市場における資源のポジションが新興国市場において変化する論理を解き明かす。本稿ではこの現象を説明する論理として「リソース・リポジショニング・フレーム(RRP フレーム)」を開発する。RRP フレームは海外市場参入初期段階における資源の再配置に行動指針を与え、企業家活動と学習ルーティンへ内容を与える。企業は本国資源のリポジショニングを前提として現地市場を分析し、市場適合度の高い資源(企業特殊優位)を識別する。企業はリポジショニング・プロセスを通じて現地市場で活用できる本国資源を峻別し、当該資源への重点的な投資の意思決定を下し、ビジネスモデルを再構築している。