国際保健医療
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Print ISSN : 0917-6543
原著
結核菌塗抹検査外部精度管理(EQA)モデル構築-ザンビアにおける検討-
藤木 明子工藤 知子座間 智子
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2007 年 22 巻 1 号 p. 11-16

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抄録
背景及び目的
ザンビアの首都ルサカでは15歳~49歳の16%がHIV 陽性(2001/2年)であるが、結核も重要な保健問題である。DOTS戦略は2002年に全国に拡大し、患者発見率81%、治癒率73%で、WHOの掲げる治癒率85%には満たない。また、HIVの蔓延により結核患者数は年々増加傾向にあり、末端レベルの診断センターにおける結核診断の精度強化が急務になっている。この様な背景のもとに国際協力機構(JICA)による「ザンビア国エイズ及び結核対策プロジェクト」の一環として、喀痰塗抹検査サービス向上・改善のための外部精度管理(EQA)システムのモデル構築が試みられた。本稿ではその成果を報告し、途上国における結核問題解決の一助になる質の高い菌検査体制のあり方を論じた。
方法
ルサカ州の全診断センター22カ所をモデル対象とした。EQAはEQAグローバルガイドラインに沿って行われ、抽出したスライド標本を第三者によってブラインド再鏡検し、塗抹標本作成の質及び鏡検技術の質の上から評価した。これら得られたEQAの結果(2003年7月~2005年9月)に基づいて検討し、考察を加えた。
結果・考察
鏡検技術のMajor errorは5%から0.7%、Minor errorは3.4%から0.3%へと減少した。また、エラー未発生の施設数は、EQA開始初期は対象22施設中わずか3施設に過ぎなかったが、観察最終時期には17施設に増加した。また、標本作成の質をみると技師の技術が直接反映される塗抹の厚さ、大きさ、均等性などが国際的な標準に近づき大きく改善され、塗抹標本作成時のこれらの因子が鏡検のエラーに作用することが示唆された。この様にこの精度管理システムの有効性が示され、頻繁な巡回指導と支援体制が重要であることが明らかになった。精度管理システムの導入・定着による質の高い喀痰塗抹検査の確立は結核対策の基本であるDOTS戦略成功のための不可欠な要因であり、結核罹患率・HIV感染率共に高い多くの開発途上国での新たな結核感染の拡大を防ぐ鍵になると期待される。
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© 2007 日本国際保健医療学会
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