国際保健医療
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原著
新規塗抹陽性結核患者発見向上に資する指標と分析:イエメンの事例から
伊達 卓二
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2007 年 22 巻 1 号 p. 17-25

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抄録
目的
国民が受けることができる医療には、先進国と開発途上国間で大きな隔たりがあるだけでなく、国内にも格差がある。イエメン保健省の場合、格差是正のため、公的医療を効率的にできるだけ多くの国民に広げることを目標としているが、地方から医療情報を集める体制が整っているとはいえない。そこで、ほぼ全国に拡大しているイエメン国家結核対策のデータを利用し、地域間の格差を分析することに意義があると考える。本稿では、郡別に新規塗抹陽性結核患者発見率を求め、それと関連する因子を統計的に分析することで、新規塗抹陽性結核患者発見向上に資するべく考察した。
方法
イエメンで行われた2004年末の国勢調査による最新の人口を基に、WHOの基準に従い、郡別の新規塗抹陽性結核患者届出数から郡別に発見率を求めた。この郡別新規塗抹陽性結核患者発見率と、顕微鏡施設の有無、人口規模、州都からの距離などの因子を比較して統計分析することを試みた。
結果
新規塗抹陽性結核患者が発見される確率は、人口42,322人以上の郡で高く、また、顕微鏡施設が配置されている郡では、郡別新規塗抹陽性結核患者発見率が70%以上である確率が高いことが判明した。顕微鏡施設の有無は、新規塗抹陽性結核患発見の向上につながる要因と考えられる。さらに、新規塗抹陽性結核患者が発見された地域の人口総数は、イエメン国全人口の約74.1%であり、保健医療政策の目標である全国75%の人口に公的医療を提供する計画とほぼ合致する。
結論
郡別の新規塗抹陽性結核患者届出数から求めた発見率は、特定の因子について統計的有意差があることが確認された。郡別の新規塗抹陽性結核患者発見率の分析を通じて、開発途上国での結核対策を評価する参考となることが期待される。
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© 2007 日本国際保健医療学会
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