国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
原著
在日外国人患者と看護師との関係構築プロセスに関する研究
野中 千春樋口 まち子
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2010 年 25 巻 1 号 p. 21-32

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抄録
目的
 多様な文化背景を持つ在日外国人患者と看護師との関係構築プロセスを明らかにする。
方法
 過去1年以内に在日外国人患者の受け持ち経験を有し、研究参加に同意した常勤の看護師 11名を対象に、半構造化面接で得られたデータを、グラウンデッド・セオリーを用いて帰納的記述的に分析した。
結果
 在日外国人患者と看護師との関係構築プロセスを構成する要素として、【在日外国人患者に適切な看護提供をしようとする意思】、【多様な文化背景を持つ患者の文化の違いを踏まえ理解しようとする意思】、【在日外国人患者との関わりをためらう】、【多様な文化背景を持つ患者に歩み寄る】の 4つのコアカテゴリーと、 25のサブカテゴリー、 110の下位カテゴリーが抽出された。
 看護師は、【在日外国人患者に適切な看護提供をしようとする意思】と、【多様な文化背景を持つ患者の文化の違いを踏まえ理解したいという意思】を備えながらも、過去の在日外国人患者との負の看護経験や、自らの乏しい語学力を自覚することで、患者との関わりに自信が持てず、【在日外国人患者との関わりをためらう】思いを抱いていた。他方、看護師は、在日外国人患者と関わる心構えを持ち、患者を出身地域の別なく、さらに、日本人の患者と区別せずに、公平に捉えることで、関わりに自信がなくとも、「なんとかなる」と楽観的に受け止め、それを患者と積極的に関わる原動力とし【多様な文化背景を持つ患者に歩み寄る】ことにつなげていた。さらに、患者からの歩み寄りを感じることで、自己肯定感を高め、患者との関係を発展させていた。
考察
 在日外国人患者と看護師との関係構築プロセスの特徴として、看護師が在日外国人患者に、日本人患者と同様の「同一化」を求める段階から、患者との間に「違い」が存在するという段階に発展させていた。すなわち、自分自身の価値観や過去の経験から得た知識と照らし合わせながら、次第に、患者との間に存在する「違い」を受け入れ、さらに、患者の訴えの本質的な部分を見極めるために、患者に歩み寄ろうとする関わりが、患者との相互作用を促進し、患者との関係を発展することにつながることが示された。
結論
 看護師が、多様な文化背景を持つ在日外国人患者と関係を構築するためには、患者との間に存在する文化的「違い」を認識し、自らの価値観や知識と照らし合わせながら、患者からの歩み寄りを感じ、それを原動力として、患者に歩み寄ろうとするプロセスが重要となることが示唆された。
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© 2010 日本国際保健医療学会
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