抄録
背景
今日のglobal healthが直面している世界的な課題の一つに医療専門職の不足や不均衡な配分がある。さらにその問題に拍車をかけているのが、HIV/エイズの蔓延である。そのような状況下で、医療専門職と非医療専門職間にて職務の役割移行(task shifting approach)が進められている開発途上国では、地域における予防活動、ケア、抗HIV治療(Antiretroviral Therapy; ART)の支援者などの必要性から、保健ボランティアであるCHW(Community Health Worker)が再び注目をあびるようになった。
目的
本研究では、HIV/エイズケアに従事する保健ボランティアの活動継続を支える環境についてモチベーションに焦点をあて、考察することを目的とする。
方法
PubMed database用い、16の組み合わせで検索を行い、文献レビューを行った(第1キーワード : 「Motivation」、第2キーワード : 「HIV」「AIDS」、第3キーワード「community health aides」、「community health workers」「community workers」「lay counselors」「adherence support workers」「adherence counselors」「care givers」「volunteers」)。
結果
ヒット290件のうち、9件が本研究の条件を満たす論文であった。8件が先進国から、残りの1件が開発途上国からの報告であった。また6件の文献では、研究対象者の半数はHIV陽性者や同性愛者、両性愛者であった。全ての文献を通して、「他の人やコミュニティに貢献したい」「自己成長のため」が活動の参加、継続の理由であった。特に活動継続のモチベーションには、「他メンバーやスタッフからのサポート」「(周りからの)評価」があり、開発途上国特有のモチベーションとして、「正規雇用への期待」が見られた。
結論
先進国、開発途上国問わず、HIV/エイズケアに従事する保健ボランティアの基本的なモチベーションは類似している。しかし、保健ボランティアを保健システムの一部として活用している開発途上国において、安定したケアを持続的に提供するためには、十分かつ継続的なサポートと監督が必要となる。またHIV陽性者自身がHIV/エイズケア提供者として大きな役割を担うことが、HIV/エイズの継続的なケアを支える重要な要素ともなりうる。今後も、医療専門職不足、HIV/エイズの蔓延の二重負担により、非医療専門職へのサービス提供職務の役割移行がすすめられる開発途上国において、HIV/エイズケアに従事する保健ボランティアのモチベーションに影響する要因を探究していく必要がある。