国際保健医療
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Print ISSN : 0917-6543
原著
Wealth index 短縮版の作成と母親の保健知識・行動に関する研究への適用
柳澤 理子征矢野 あや子五十嵐 久人Hang VuthyOum Sophal浦 みどり
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2012 年 27 巻 2 号 p. 141-149

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抄録
目的 : 開発途上国においては、家庭の収入を測定することは非常に困難である。家財所有を数えるwealth indexは収入の代替指標として用いられるが、質問項目が多いのが難点である。我々は、カンボジア農村に適応可能なwealth index短縮版を作成し、母親の知識および行動との関連を検討した。
方法 : Kampong Cham県の4つの保健センター管轄地域で、過去1年間に出産した640人の女性を対象に、質問紙調査を実施した。Wealth index短縮版構成はDemographic and Health Survey (DHS) Wealth Indexの方法に従った。60以上あるカンボジア版DHSの経済項目から、分布や項目間相関を検討しながら18項目を選択し、主成分分析を実施した。主成分得点が0.4未満の項目を削除し、11項目からなる短縮版Cambodia Wealth Index-Rural version (CWI-R) を作成した。Cronbach’s αは 0.81であった。CWI-Rにより経済状況を5分位に分け、母親の知識及び行動の割合を5分位ごとに計算した。
結果 : 対象者は平均年齢は27.0、標準偏差6.4であった。妊婦健診、産後健診およびskilled birth attendantによる出産の率は、経済状況が向上するにしたがって増加した。妊娠および出産のリスクに関する知識は、項目により差がみられた。遷延分娩および浮腫をリスクと認識している女性は経済状況が向上するに従って増加したが、妊娠中の出血に関してはそのような傾向はみられなかった。経済状況の良い層の女性は、ビタミンAの効果や腸管寄生虫感染を起こすリスク行動について知っている者が貧困層より多かった。
結論 : CWI-Rが示した分布パターンは、Wealth Index原版とよく似ており、項目数の多い原版経済に代わる指標として、保健医療関連の調査において、住民の知識や行動と経済との関連を検討する指標として有効だと思われる。
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© 2012 日本国際保健医療学会
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