抄録
目的
本研究の目的は、在日ブラジル人CSHCNとnon-CSHCNの保健医療サービスへのアクセスと育児ストレスを比較し、子どもがCSHCNであることが母親の育児ストレス増加の要因となっているかどうかを検討することである。
方法
愛知県の3歳児健診、ブラジル人学校、医療機関において、3~6歳児をもつ在日ブラジル人の母親130名に質問紙を配布し、有効回答73名を分析対象とした。質問紙は属性、CSHCN Screener©(ポルトガル語に翻訳)、児の保健医療サービスニーズ、育児ストレス尺度(PSI/SF)から構成した。分析はCSHCNとnon-CSHCNとの2群の比較および、育児ストレス得点の重回帰分析を行った。
結果
CSHCNスクリーニングの結果、73名(男34名)中CSHCNは9名(男6名)で、気管支喘息4名、自閉症3名、気管支炎、心疾患各1名であった。すべてのCSHCNはかかりつけ病院を持っていたが、今後利用を希望するがまだ利用できていないサービスとして、とくに歯科受診、リハビリテーション、専門医の受診などがあった。過去1年間に受診の遅れや差し控えの経験がある者は3名であり、全てnon-CSHCNであった。また母親全体の育児ストレス得点の平均は、TS(育児ストレス総得点)60.2点、PD(親自身に関するストレス)22.0点、P-CDI(親子関係機能不全)16.9点、DC(児特徴に関するストレス) 21.7点であり、CSHCN の母親においてnon-CSHCNに比べDCが有意に高かった。TSを目的変数として属性及びCSHCNであることを説明変数に重回帰分析を行なった結果、「家庭の経済状況が普通以上」「父親が全く日本語を理解できない」「CSHCN+慢性疾患を持つ児」の3変数が有意となった(R=0.507、R2=0.257、調整済R2=0.215)。
考察
在日ブラジル人CSHCNはnon-CSHCNに比べ、かかりつけ医、受診の差し控えにおいて不利な状況は見出せなかったが、希望しながら受診できていない特定の領域がある。また、在日ブラジル人の母親の育児ストレスは全体としては高くないが、DCはCSHCNの母親において高く、CSHCNを持つ母親に対するストレスへの配慮が必要だと思われる。