国際保健医療
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持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs):ユニバーサリティとコンバージェンスの視点による考察
湯浅 資之金子 恵安齋 寿美玲
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2017 年 32 巻 1 号 p. 17-26

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抄録

  2015年9月の国連総会においてミレニアム開発目標(MDGs)の後継として持続可能な開発目標(SDGs)が採択された。MDGsは先進国から途上国への支援策を念頭に測定可能な課題に焦点を絞って実施された。保健のターゲット占有率は28.6%と高く、保健課題の優先性は顕著であった。一方、SDGsは先進国と途上国すべての国が達成すべき目標を掲げ、17のゴールと169のターゲットから構成されている。SDGsにおける保健の占有率は7.7%でMDGsの4分の1にまで低下したことから、SDGsの中で保健の優先性は後退したかに見える。しかし、SDGsでは保健以外のターゲットに健康に関連する課題が23含まれており、SDGs達成に向け保健は引き続き重要な課題であることに相違ない。また、健康の社会的、環境的、経済的決定要因への広範な介入を目指すHealth in All Policies政策を推進するには有利な環境が整ったとも言える。

  SDGsは持続可能な開発に必要なあらゆる領域を包含しているユニバーサリティ(広範性;universality)を有するゆえ、意思決定者の目には焦点が散漫に映り、理解し難いとの懸念がある。その弱点を補強するために、より包摂的な概念や指標にコンバージェンス(収束;convergence)させる試みが提案されてきた。保健領域においてはその代表的提案がユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)とグランドコンバージェンス(GC)である。

  SDGsは成立までのプロセスに実に多くのステークホルダーが参加し多様な意見が出された結果、非感染性疾患や精神保健、薬物乱用や道路交通事故の対策など近年注視されている問題を数多く取り込むこととなった。その背景に「私の病気はあなたの病気よりも重要である」式に専門分野の重要性を主張する各方面からの要望を排除できなかったことも一因であり、百家争鳴状態に陥ってしまった感は拭えない。UHCとGCはその閉塞を打開する切り札として提案され、その実現が今後の鍵になると思われる。

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© 2017 日本国際保健医療学会
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