国際保健医療
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活動報告
東南アジア4か国を対象に実施した看護教育制度に関する本邦集団研修の評価・課題・教訓
橋本 麻由美藤田 則子森山 潤深谷 果林
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2017 年 32 巻 2 号 p. 83-93

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抄録

目的

  東南アジア4か国のカンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナムを対象に、看護教育の質の担保制度強化を目指して2015年に実施した「東南アジア看護助産人材育成強化」研修を、WHO提案の5段階研修評価ガイドを用いて評価し、研修効果の要因や課題ならびに教訓を得る。

方法

  データは、研修を通して得られた研修員からの自記式研修評価、研修員と研修担当者で実施した研修評価会記録、研修後フォローアップ訪問時の面接記録とした。研修評価の方法はWHO提案の5つのレベルを追って評価する5段階研修評価を改編して用いた。研修効果の要因、課題、教訓に関しては、WHOの5段階評価結果・研修員からのフィードバックによる評価結果・研修後活動計画の進捗結果から、方法論内トライアンギュレーションにより帰納的に導き出した。

結果と考察

  「東南アジア看護助産人材育成強化」研修は、「レベル1:研修員の反応」や「レベル2:学習」が高いだけでなく、「レベル3:研修後に研修員が研修での学びを自分の職場に適応させる行動」を起こした効果的な研修だったことを確認した。その要因は、(1)共通課題をもつ近隣の複数国を対象とした経験共有型による実践的な研修内容だった、(2)研修言語を研修参加各母国語としたことによって適切な研修員が選定された、(3)研修資料が母国語だったため研修後に自国の関係者と共有しやすく研修後の活動計画実施の協力を得やすかった、(4)研修中に研修後フォローアップ訪問を研修員と合意したことによって研修員の活動計画実施への意欲が維持された、(5)研修事前訪問による研修参加国の関係者への研修概要の説明が関係者からの研修への理解と研修にて作成された活動計画への関心を高めたことだった。教訓は、母国語による技術的専門用語の定義の確認と介入としてのフォローアップの有効性だった。今後の課題は、「レベル4:職場への寄与」を目指して他機関とも連携した各国の個別ニーズへの対応と、「レベル5:インパクト」に係る継続的な経験共有のしくみづくりである。

結語

  WHOの5段階研修評価ガイドを用いて、「東南アジア看護助産人材育成強化」研修を評価した結果、研修員が研修での学びを自分の職場に適応させる行動を起こした効果的な研修だったことを確認し、その要因・課題・教訓も導き得た。今後は、今回得られた学びを活かして、より効果的な研修の企画・実施・評価に取り組んでいきたい。

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© 2017 日本国際保健医療学会
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