国際保健医療
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活動報告
国際的なmass gatheringにおける多国籍医療専門職者との救護活動
嶌田 理佳
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2018 年 33 巻 1 号 p. 17-26

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抄録

目的

  2015年8月、山口市において世界スカウト機構(World Organization of the Scout Movement: WOSM)主催の国際的なキャンプ大会が開催された。大会には155の国と地域から3万3千人が参加し、12日間に渡るプログラムを通して交流を深めた。会場内で発生するさまざまな健康問題に対応することを目的として設置された救護所では、200名の多国籍の医療専門職者が協働して傷病者の救護や健康管理を行った。本稿では、救護状況および多国籍医療専門職者との救護活動を通して得た、国際的なmass gatheringにおける医療・保健活動への示唆を述べる。

方法

  会議資料、業務マニュアル、各種報告書等の記載事項から救護活動に関する内容を抽出して、医療サービスの体制と活動を評価した。会期中の救護施設としては、日本人の医師、看護師、歯科医師、薬剤師等が常駐して診療を行う「中央救護所(JH)」を1箇所、応急手当のみを行う「ファーストエイドポイント(First Aid Point: FAP)」を4箇所設置した。救護スタッフは、International Service Team(IST)として参加した20カ国の医療専門職者200名を、①職種/職位、②経験年数/年齢、③性別、④登録国(出身国)/地域、に関する情報を元にグループ分けし、JHと各FAPに配置した。

結果

  会期中のJHの受診者数は、のべ3,247名であった。傷病内訳では熱中症・脱水症、感冒・咽頭炎・上気道炎、挫創・切創、日焼け・日光皮膚炎などが多くみられた。FAPにおける対応総数は2,291件で、靴擦れ、挫創・切創、熱中症・脱水症、日焼け・日光皮膚炎などが多く報告された。感染性疾患の流行は起こらなかった。救護活動における医療文化の違いは随所でみられたが、コミュニケーションや診療における問題は生じなかった。

結論

  外国からの訪問者に対しては、日本の気候の特徴、特に夏季であれば日焼け・日光皮膚炎や熱中症の予防に関する指導を行い、理解を促す必要がある。多国籍医療専門職者が協力し合って救護活動を展開できた理由としては、個々の文化的背景は異なっても医療者として共有できる知識や価値観があったこと、良好なコミュニケーションのもとでストレスに配慮した業務環境が提供されたことが挙げられる。

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© 2018 日本国際保健医療学会
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