国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
33 巻, 1 号
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総説
短報
  • 李 錦純, 北野 尚美, 俵 志江, 菅野 裕佳子, エレーラ ルルデス, 李 節子
    2018 年33 巻1 号 p. 11-15
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2018/04/12
    ジャーナル フリー

    目的

      在日外国人の介護保険における居宅サービスの利用状況について明らかにすることを目的とした。

    方法

      福祉・保健・医療の総合情報サイトWAMNETのデータベースを用いて、大阪市に所在する全ての居宅介護支援事業所および地域包括支援センター1,106か所に所属する介護支援専門員1,800名(1事業所につき1~4名所属)を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。回答結果は数値化し、記述統計を主体とした量的データ分析を行った。また、日本語によるコミュニケーション能力と性・年齢・家族構成との関連性について、Fisherの直接確率検定により検証した。

    結果

      460名の介護支援専門員より回答が得られ(回収率25.6%)、590件の在日外国人利用者情報を得た。その内、有効回答の312件を分析対象とした。利用が多いサービスは、訪問介護および通所介護であった。介護支援専門員の34.3%が、在日外国人利用者に対し、日本語によるコミュニケーションが困難ととらえており、コミュニケーションが難しいグループの高齢者の年齢層が高かった(p<0.05)。また、経済状態について困難と判断された利用者は約60%におよんだ。

    結論

      年齢層が高い外国人利用者ほど日本語によるコミュニケーションが困難な現状があり、ケアプラン作成やサービス利用に伴う意思疎通やニーズの把握において、支障をきたす可能性がある。また、経済状況の厳しい外国人利用者が多く、一割の利用者負担のために、必要なサービスの制限する可能性もある。サービス提供における公平性の確保の観点からも、在日外国人の居宅サービス利用における、コミュニケーションおよび経済面への支援体制の充実が課題として示された。

活動報告
  • 嶌田 理佳
    2018 年33 巻1 号 p. 17-26
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2018/04/12
    ジャーナル フリー

    目的

      2015年8月、山口市において世界スカウト機構(World Organization of the Scout Movement: WOSM)主催の国際的なキャンプ大会が開催された。大会には155の国と地域から3万3千人が参加し、12日間に渡るプログラムを通して交流を深めた。会場内で発生するさまざまな健康問題に対応することを目的として設置された救護所では、200名の多国籍の医療専門職者が協働して傷病者の救護や健康管理を行った。本稿では、救護状況および多国籍医療専門職者との救護活動を通して得た、国際的なmass gatheringにおける医療・保健活動への示唆を述べる。

    方法

      会議資料、業務マニュアル、各種報告書等の記載事項から救護活動に関する内容を抽出して、医療サービスの体制と活動を評価した。会期中の救護施設としては、日本人の医師、看護師、歯科医師、薬剤師等が常駐して診療を行う「中央救護所(JH)」を1箇所、応急手当のみを行う「ファーストエイドポイント(First Aid Point: FAP)」を4箇所設置した。救護スタッフは、International Service Team(IST)として参加した20カ国の医療専門職者200名を、①職種/職位、②経験年数/年齢、③性別、④登録国(出身国)/地域、に関する情報を元にグループ分けし、JHと各FAPに配置した。

    結果

      会期中のJHの受診者数は、のべ3,247名であった。傷病内訳では熱中症・脱水症、感冒・咽頭炎・上気道炎、挫創・切創、日焼け・日光皮膚炎などが多くみられた。FAPにおける対応総数は2,291件で、靴擦れ、挫創・切創、熱中症・脱水症、日焼け・日光皮膚炎などが多く報告された。感染性疾患の流行は起こらなかった。救護活動における医療文化の違いは随所でみられたが、コミュニケーションや診療における問題は生じなかった。

    結論

      外国からの訪問者に対しては、日本の気候の特徴、特に夏季であれば日焼け・日光皮膚炎や熱中症の予防に関する指導を行い、理解を促す必要がある。多国籍医療専門職者が協力し合って救護活動を展開できた理由としては、個々の文化的背景は異なっても医療者として共有できる知識や価値観があったこと、良好なコミュニケーションのもとでストレスに配慮した業務環境が提供されたことが挙げられる。

資料
  • 湯浅 資之, 白山 芳久, 西田 良子, 北島 勉
    2018 年33 巻1 号 p. 27-34
    発行日: 2018/03/20
    公開日: 2018/04/12
    ジャーナル フリー

    目的

      今日の開発途上国における民間セクターの著しい成長と援助国と被援助国における公的財政の制約という中で、途上国の多様化する保健医療ニーズに如何に応えるかという問いに対する戦略として、近年、官民連携は注目を集めている。その反面、国際保健医療や開発援助の領域において官民連携に関する定まった定義は存在しない。しかし、その評価や実践方法を研究する上で概念整理は必要である。そこで本稿では、官民連携と同じく社会的課題解決に取り組む議論で使われ始めた他4つの概念、すなわちBOPビジネス、ソーシャルビジネス、CSR(社会的責任)、CSV(共有価値の創造)と共に5つの概念の関係性を整理しつつ、官民連携の定義付けを試みた。

    方法

      文献検索により過去にどのような定義付けがなされてきたか調べ、官民連携と他4つの概念の関係性を整理した。

    結果と結論

      5つの概念の関連性を図示化し、その上で本稿では「官民連携とは、企業の成長を担保しつつ、公共が求める社会課題解決のために公的機関と民間企業が協働するプロセス」と定義した。

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