国際保健医療
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研究報告
ネパール国カスキ郡における児童の栄養状態に関連する保護者の健康の社会的決定要因の検討:観察横断研究
神崎 真姫Janak PoudelPrakash Acharya河田 里奈小田 容子奥川 裕子木村 健司酒井 ひろ子
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2021 年 36 巻 2 号 p. 49-62

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抄録

目的

  本研究の目的は、ネパールの同一地区内で異なる生活圏に居住する児童を対象に、居住地、カースト、保護者の健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health: SDH)、さらに児童の1日のジャンクフード摂取状況と児童の栄養状態との関連を検討することであった。

方法

  2017年12月から2019年3月に、ネパール国カスキ郡マチャプチャレ行政区における、JICA支援活動拠点であった村とその近隣地域で、6-12歳の児童331名とその保護者を対象に調査を実施した。

  本研究では、WHOで栄養不良の評価の一つとして用いられている年齢別体格指数(Body Mass Index for age z-score: BMIZ)をUnderweightの判定基準として使用し、BMIZ<−2SDをUnderweightと定義づけた。

  児童の栄養状態を評価し、児童の保護者を対象に保護者のSDHに加え、児童の1日のジャンクフード摂取状況調査を実施し、ロジスティック回帰分析で検討した。

結果

  調査に参加した児童のうち、Underweightであった児童は31名(9.4%)であった。

  保護者のSDH、さらに児童の1日のジャンクフード摂取状況と児童のUnderweightとの関連を検討したところ、カースト(OR=0.241、p=0.001)、母親の教育歴(OR=3.879、p=0.011)、父親のリテラシー(OR=2.790、p=0.023)に、統計学的有意差が示された。

結論

  本研究では、児童のUnderweightには高位カースト、母親の低い教育歴、リテラシーを持たない父親に関連を示し、児童の1日のジャンクフード摂取状況は関連を示さなかった。

  子どもの栄養状態には、保護者のSDHが関連していた。子どもの健康への影響要因を把握するためには、文化、教育、就労、食生活を含む生活状況など、養育提供者である保護者の社会背景の変化を捉え直し、保護者のSDHを多角的に把握した調査が求められる。

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© 2021 日本国際保健医療学会
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